トイレが使えないと、どうなるでしょう?

例えばみなさんが、山や海へ遊びに行ったとしましょう。
そこでトイレがなくて、渋々「ちょっと人気の少ないところで…」用を足したことがある方もいらっしゃることと思います。
私たちは、そのイメージがあるので「トイレが使えなくても、そこらへんですれば…」と思いがちです。
しかし本当に、災害時に「そこらへんでこっそり」用を足すことができるのでしょうか?

排せつ物の臭いは想像以上に強烈で苦痛

ペットを飼っている方ならご存知かと思いますが、ペットの排せつ物の臭いは強烈なので、同じ部屋にペットのトイレを設置していると「あ、うちの猫がうんちしたな」とすぐにわかりますよね。
小さな動物の排せつ物でさえすぐに臭うのに、その何倍もの体重の人間の排せつ物が臭わないわけがありません。
介護経験のある方ならおわかりでしょう、排せつ物の臭いは部屋に染み付きます。つまり、そのモノを取り除いた後にも、臭いだけは残ってしまうのです。
ここまできて、「じゃあどこかの部屋とか、ゴミ袋とかに排せつ物を入れてきっちり密封しておけば…」と考えつくのはごく当然のひらめきですね。
でも、それは残念ながら災害時には叶いません。

大量の排せつ物をどこに、何で密封する?

ストックがある方は「とりあえずゴミ袋に」とお思いでしょう。
しかしそれは「あなたの家が現状のまま残っている場合」に限るのです。
3.11のとき、多くの家は津波で流されたり、倒壊してしまいました。
毎年のように発生している豪雨災害では、家はその場所にあるのに、水に浸かってしまい入ることができなくなりました。
わたしたちはいつでも何かをイメージするとき、無意識に「現状」を基準にしてしまいます。
それぐらい当たり前に「家がある」と思い込んでいるのです。
家で寝泊まり出来ないので、避難所で生活することになりますね。
避難所には多くの人が集まりますから、たとえごみ袋があったとしても、あっという間に排せつ物でいっぱいになるでしょう。
そもそも、排せつ物とは乾いた個体ではなく、液状です。袋に入れても、小さな穴が開いていれば漏れ出してしまうし、少しの衝撃で穴が開いてしまいます。
つまり、大量の排せつ物を密封するのはほとんど不可能です。

人間はトイレ以外で排せつすることが難しい

冒頭に書いた話に戻りますが、ハイキングや海水浴でトイレがなく、「じゃあちょっと人気の少ないところで…」と、トイレではない場所で排せつをしたときに、どんな気持ちになりましたか?
わたしたち人間は、トイレで排せつするという衛生観念を持っています。
つまり、トイレ以外での排せつは非常にストレスになるということです。
アメリカの心理学者、マズローの考案した欲求5段階説によると、人間の欲求はピラミッド型に5段階に分かれており、その最下層(ピラミッドが地面に接している部分)は、排せつや睡眠、お腹を満たすなどの最低限の生命維持の生理的欲求と呼ばれています。
その最下層の生理的欲求は私たち人間を支える基本的なものなので、そのひとつである排せつに問題があると、非常に強いストレスを感じてしまいます。

では非常時にトイレが使えない場合、わたしたちはどうしたら良いのでしょう?

災害時には、まずトイレは使えないと思っておきましょう。
特に避難所では、トイレが使えたとしてもそこには感染症の危険が大いにあるので注意が必要です。
トイレが使えない前提での備えをしておく必要があります。

災害時にあると良い備え・トイレ編

  • ペットシーツ(尿などの液体を吸収する)
  • 清潔なティッシュ
  • 抗菌剤(排せつ物の菌を不活化させ飛散させない)
  • 消臭剤(排せつ物の臭いを閉じ込める)